室内で固定する乗用自転車型のフィットネス器具にスピンバイクという器具がある。
エアロバイクと同じように室内で乗る自転車であるが、どのように違うのか?また、どちらを買うべきなのか?について書くのである。
(本当はエアロバイクという名称はコンビ社の登録商標なので、フィットネスバイクなどというのが本来正しいのだが、ここではおいておくとしよう)
スピンバイクとエアロバイクの違い
エアロバイクとは室内で使う乗用自転車型のトレーニング機器の総称で、その中にはスピンバイクも含まれる。図にするとこんなイメージだ。
ではスピンバイクとはどのような特徴のあるエアロバイクであると言えるのだろうか?
特徴その1:乗車姿勢
ALINCO公式サイトより引用
このような前傾姿勢の乗車姿勢がとれるのがまず特徴。
スポーツ自転車の競技のひとつとしてタイムトライアルという競技がある。
自転車の短距離走である。できるかぎり空気抵抗を減らすため、体を水平にすることが求められる。
コンセプトストアブログ より引用
タイムトライアルはこんな乗車姿勢である。
このような乗車姿勢をとって乗れるのがスピンバイクの特徴。とはいえ、スピンバイクではこんなキツイ姿勢をとる必要は必ずしもなく、ハンドルのほかの部分を握れば楽な乗車姿勢で乗ることも可能である。
特徴その2:ペダルとホイールの回転が直結している
これが最大の特徴といっていいだろう。
普通のママチャリを想像してもらうとわかるが、ペダルを回すのをやめても、タイヤは回転し続ける。
これと同じなのが、いわゆる普通のエアロバイクである。
幼児用の自転車やピストバイクと呼ばれる自転車がスピンバイクと同じである。
タイヤが回っている限りはペダルもタイヤの回転にあわせて回転し続ける。
それに対して、スピンバイクはペダルを回すのをやめても、ペダルは回り続ける。勢いがついている場合はいきなりペダルは止まらないのである。
幼児用自転車に乗り、ゆるい下り坂を降りている状況を考えてみるとわかりやすい。ペダルが勝手に回り続けるという現象が起こるのがスピンバイクである。
自転車の後ろタイヤに相当するのがホイールである。
このホイールがペダルと連結していて、ホイールが回っている時はペダルも勝手に回るのがスピンバイクの特徴だ。
特徴その3:ペダルの負荷(抵抗)を生み出す方式の違い
家庭用の数万円程度以下の安価なエアロバイクは、磁石によってペダルの重さを調整するような仕組みである。
タイヤのような回転する部分の周縁に磁石が取り付けられており、磁石を近づけるとペダルが重くなるという仕組みだ。
エアロバイク異音対策このページより写真をお借りしました。
家庭用のエアロバイクとしてもっとも普及していると思われる、アルインコ社製のエアロバイクの外装を外したところである。
ホイール部分を拡大した写真
このようにマグネットがホイールに面するように設置されており、この部分の距離を変えることで重さが変わるようになっている。
スピンバイクの構造
スピンバイクの場合は、基本的にはホイールの重みによって負荷を生み出す。
ホイールは前述したように、自転車で言えば後ろのタイヤみたいなものだ。
ママチャリで後ろタイヤを重たくしたら、回すのに体力が必要になることは想像しやすいと思う。
スタンドで地面に立て掛けた状態で、ママチャリをこいでみることを考えてみよう。もし、ママチャリのタイヤがゴムではなくて、鉄でできていたとしたら、その場で空回りさせるとしても回転を維持するだけでも大変になることはすぐわかるだろう。
これがスピンバイクの基本的な原理である。
高級機になればなるほど、ホイールの重量が重たくなる。
2万円ぐらいのスピンバイクだと6kgぐらいが多いようだ。3万円を超えると10kg以上になってくる。
スピンバイクの重さの調整方法の種類は主に2種類
基本的なペダルの重さを生み出す原理はこれなのだが、重さの調整の方法がスピンバイクでも主に2種類ある。
ひとつはエアロバイクと同じくマグネットによって負荷を変える方法。
この方法を採用している機種は値段が高い機種が多い。以前は10万円を超えるような機種が多かったが、現在は普及が進んでおり3万円前後でも購入できるようになった。
これを以降はマグネット式と呼ぶことにする。
もうひとつはホイール部分に布や革などを押し当てて、負荷の強さを変える方式。こちらが安価でできるため主流である。これを以降は摩擦式と呼ぶことにする。
摩擦式はこの通りの簡単な原理である。
ネジをきつくなる方向に回すと、負荷が重たくなるというわけだ。
マグネット式と摩擦式のメリット・デメリットを比較してみよう
1.連続で使用できる時間
摩擦式は熱量はそれなりに発生するものの、ホイール全体が暖かくなるだけなので、熱による部品の劣化が全くといっていいほどないのが最大の特徴。
パットの部分はずっと摩擦されているにもかかわらずほとんど熱をもたないので大丈夫なのだ。このため摩擦式のスピンバイクのほとんどが連続使用時間の制限がない。
これに対してマグネット式はマグネット自体が発熱するため、長時間使用するとマグネットが劣化する。そこで大抵のエアロバイクは連続使用時間が30分という厳しい制限がついている。家庭用でも高級機になるとこの時間が長くなる。
とくにダイエットといった用途であれば、運動強度は低くても良いので、長時間連続しておこなうことが重要になってくる。使用時間の違いは重要である。
2.使用時に発生する音
摩擦式は布や革がこすれる音が発生するので完全に無音とはならない。
ガス管が外れてガスが漏れるような音と形容するのがピッタリ。この程度の音量でほとんど問題にならないのではあるが、この点ではマグネット式が優れている。
3.消耗部品の有無
摩擦式はパットが消耗する。
パットは消耗部品として売られているが、普通に1日1時間程度使うと、数年で交換の必要が生じる。とはいえ、私の経験ではその程度の使用で2年経過したが全く交換の必要はないという程度であった。
とはいえ、千円程度の話なので、大した問題ではない。
メーカーがサポートを打ち切って手に入らなくなることは致命的な問題になりうるが、スピンバイク購入時に同時に買っておけばすむことである。
4.価格
摩擦式の方が構造が単純なので低価格でできる。
一般的なエアロバイク(スピンバイク以外)の特徴
エアロバイクの長所
- 重いホイール部分がないため軽い
- コンパクトに作ることができる
- ペダルが惰性で回転しないので安全
折りたたむことができるといったエアロバイクもあるが、これもスピンバイクにはできないことである。
例として挙げたのがDAIKOU社のDK-662Hである。
このように折りたたんでコンパクトに収納できる。コンパクトに収納できかつ60分の連続使用に耐える数少ない機種。
DAIKOU社は業務用の室内運動機具を長年作っている老舗でおすすめなのだが、残念ながら在庫が安定していないことが多い。売り切れの場合は次点でBTM社の機種をおすすめしたい。これも折り畳めて、かつ60分の連続使用にも耐える。
エアロバイクの短所
3万円程度以下のエアロバイクにはだいたい大きな欠点がある。
- 連続しての30分以上の運動ができない機種がほとんど。
- あまり強い負荷はかけられない
磁力で基本的には負荷を作り出す関係上、強い負荷を作り出そうとするとコストが上がってくる。1・2万円台のエアロバイクのほとんどは負荷を最大にしても負荷が弱いことがほとんどだ。 - 負荷のかかり方が均一ではない
ペダルをこぐたびにひっかかりを感じるの普通だ。ガックンガックンという感触があってあまりのっていて気持ちがいいものではない。 - スポーツ自転車のトレーニングとしては乗車姿勢が異なるため、あまり向いていない。
スピンバイクの特長
スピンバイクの長所
スピンバイクの長所は、エアロバイクの短所がそのまま反対になった感じである。安価なスピンバイクであっても以下のような特徴を持つ。
- 長時間運転に耐える
マグネット式の機種もあるが、それでもメインの負荷はホイールの重さで生み出されていることもあり、60分以上の使用に耐える。 - 高負荷が可能
アスリートが使うような高強度の筋トレレベルの負荷を生み出すことも可能である。 - 負荷のかかり方が均一
摩擦式は引っかかりを感じるポジションは原理上ないし、実際に乗ってみても引っかかりはまったくない。マグネット式であってもホイールの慣性によるものだと思われるが、負荷のかかりかたは均一である(実際に乗ってみればわかる) - 乗車姿勢がスポーツ自転車に近く、スポーツ自転車のトレーニングとして使える
スピンバイクの短所
- 重量が重い
- コンパクトなエアロバイクに比べると設置面積が大きい
- ペダルを回すのをやめてもいきなりは止まらない
足が滑った場合、回転しているペダルに足をぶつけることがある。
安全性にまったく問題はないとは言えないのだが、無視できる程度の問題である。アスリートレベルでの高負荷、高回転でペダルを回した場合にこの問題はすこしだけ考える必要がある。しかし、スピンバイクのペダルはだいたいがこの事故を防止するため、ペダルにバンドがついていて、足を差し込める作りになっている。
基本的には心配は無用だ。
エアロバイク・スピンバイクのどちらを買うべきか?
設置場所に余裕があって、普通の住居に住んでいるのであればスピンバイク一択だと思う。
エアロバイクを買うメリットは設置場所以外が少なくて済む以外はほぼない。
さて、結論である。
部屋の中に常時おいておくスピンバイクを置くスペースがない。もしくは一部屋に複数の人と住んでいる。
それ以外であればスピンバイクを買え!である廉価版でチェーンではなくベルトドライブを採用している機種がお勧め。
音が静かでメンテナンスが全くいらないのが特徴である。私がこのブログ記事を書いた頃はハイガー産業下記2機種しかなかった。ボクシングジムでも使われているということもあり、耐久性には折り紙付きである。
この2機種は摩擦式である。
この頃に比べるとスピンバイクも進化が進んでいる。現在自宅でメインとして使っているのはこちらのFITBOXというスピンバイクである。これは年代が新しいだけあって完成度が非常に高い印象である。
2020年8月現在、廉価版のFITBOX LITEが34,800円で販売されておりこれがおすすめ。詳しいFITBOXのレビューはこちらを御覧いただきたい。
これはマグネット式なのだが、90分の連続使用に耐えるという非常に優れた設計のスピンバイクだ。これが一番オススメである。
さて、結論としてはスピンバイクを買っておけばいい。
でも大きな問題は、飽きてしまった場合は重たくかさばるので、人にあげることも売ることも難しいことかも知れない。
粗大ごみとしてかなり面倒な存在になるかもしれない。そこは要注意である。
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